ダイバーシティニュース 社会(10/18)杉山文野【11/30までの限定公開】

杉山文野(すぎやま・ふみの):NPO法人「東京レインボープライド」共同代表、日本オリンピック委員会理事、株式会社ニューキャンバス代表。フェンシング元女子日本代表。トランスジェンダー。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程終了。 日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に関わる。 現在は父として子育てにも奮闘中。公式サイトTwitter

杉山文野さんのニュースピックアップ

1. LEGOが自社製品からジェンダーの偏見や固定観念を排除

同社アンケートによると、たとえば71%に男の子が「女の子のおもちゃで遊ぶとからかわれる」と心配したり、娘にレゴを勧める親は息子に勧める親の1/3に過ぎなかったりする現実があるという。本人が選ぶのはいいが親が押しつけるとジェンダーバイアスも強まってしまう。素直に湧き出る“好き”という感情のアンテナが壊れないよう、ジェンダーニュートラルにするのは誰にとっても良いことだと思う。

2. 飛び込み金の英選手、LGBTQ+の権利認めない国を批判

今もLGBTQ+であることが何らかの犯罪になり、場合によって死刑になる国もある。「そうした国は平和の祭典である五輪に参加すべきでない」との発言だが、そうした国の排除が目的でなく、人権侵害の改善を促す意図あっての話だと思う。東京五輪では200名超のLGBTQ+アスリートが参加したが、理解のない国ではカミングアウトも難しい。自分らしくある状態で競技に集中するためにもLGBTQ+の権利改善は重要だと考えている。

3. スイスで同性婚が合法化 国民投票で2/3近くが賛成

同国でも2007年から同性パートナーシップの制度はあった。「パーソナーシップ制度があればいいじゃないか」とは日本でもよく言われるが、これは法律とまったく別物。合法化によって初めて同性カップルでも養子縁組が可能になったり、女性カップルが精子提供を受けて子どもを授かることができたりするわけで、しっかりと法制化する必要があると思う。

4. オランダ首相、「王女は女性とも結婚可能」と言明

王室での捉え方にまで踏み込んだ発言はあまり聞いたことがない。現在の王女が同性愛者かどうかでなく理論上の話とのことだが、これまで跡継ぎの関係で王室は除外されるものとされていた考えを覆す発言になった。オランダにいる友人は皆、「この国はマイノリティでも住みやすい。誰一人取り残さないことが徹底されている」と言っている。真の意味で平等が実現している国だと感じる。

5. 同性婚訴訟の本人尋問で語られた苦しみと希望

20年以上連れ添ったにも関わらず、ご病気で亡くなったパートナーが最期に倒れたとき「親族でない」との理由で病状説明を受けられなかった同性カップルの方もいる。僕も他人事でないし、カミングアウトしていない人はさらに不安だろう。同性婚は婚姻の問題にとどまらず、「自分が自分であることを言える社会なのか」という尊厳の話でもある。そこで対応を進める先進諸国に対し日本は置いてきぼりになっていると感じる。

【スペシャルトーク】LGBTQ+をとりまく日米比較

スペシャルトークでは、LGBTQ+をとりまく日米の歩みやその比較について、ニューヨークに約25年居住し、現在はジャーナリスト、翻訳家、作家としてご活躍の北丸雄二さんに掘り下げていただいた。

1980年代のエイズ禍を経て、90年代のアメリカではクリントンが大統領になり、政治的にも社会的にも多くの場面でゲイコミュニティが声をあげるようになった。その後、ブッシュの時代に911が起きて共和党で少しバックラッシュがあったのち、次はオバマで同性婚が認められるようになり、そしてトランプ。山あり谷ありの時代を通してアメリカではLGBTQ+のコミュニティが可視化されていった。

アメリカはなぜ変わったのか。1985年にロック・ハドソンという大俳優がエイズで亡くなったとき、アメリカの人々は「え?」となった。それまではゲイの人を見たこともないと思っていたが、「ひょっとしたら自分が知るなかにもそういう人々がいるのでは?」と。そこで初めて自分事になり、なぜ彼らがLGBTQ+であることを隠さなければいけなかったのかといった疑問を通して「これは人権であり生き方の問題である」と考え、言語化し、社会全体で問題に向き合っていった。

それをしてこなかった日本と、80年代から今に至るまでの36年間で変化したアメリカとのあいだにギャップが生まれた。今アメリカでは60%超が同性婚を認めているが、日本ではそうした考えがいまだ浸透しておらず、LGBT差別禁止法も自民党で(意見集約が実現せず)通らなければ、選択的夫婦別姓の議論もほとんど進んでいない。LGBTQ+の議論を進めるとジェンダーの問題も見えてくるし、日本であれば外国人労働者や技能実習生への差別、さらには入管における虐待死等、あらゆる問題につながっていく。

先月出版した『愛と差別と友情とLGBTQ+: 言葉で闘うアメリカの記録と内在する私たちの正体』(人々舎)では、LGBTQ+という1つの具体的視点を通し、そうした日本とアメリカの政治、社会、文化を比較したかった。世界が考えてきたことのなかで、日本人は何について考え忘れてきたのか。

今はLGBTQ+についてメディアでも話されるようになり、日本でも雰囲気としては理解が深まったと感じるかもしれない。でも、「本当に知っている?」との思いがある。少し前まで「同性婚って気持ち悪い」と言っていたのに、突然「今はそういう時代じゃないよね」と言って、なんとなく分かった気になっているけれど。そこで、実際には埋まっていないと感じる知識のギャップを情報できちんと埋めたいと考え、本をしたためた。

北丸雄二(きたまる・ゆうじ):ジャーナリスト、コラムニスト、作家、翻訳家

毎日新聞で記者のキャリアをスタートさせ、東京新聞(中日新聞社)社会部を経て1993年よりニューヨーク支局長。96年夏に独立後、ニューヨーク在住のまま執筆活動を続ける。在米25年を経て2018年に帰国。東京を拠点に各種メディアでコメンテーターとしてニュース解説を行うほか、新聞での政治・社会・文学評論、英米翻訳等で活躍。『カーター、パレスチナを語る:アパルトヘイトではなく平和を』(Jimmy Carter、共訳)はじめ、訳書多数。Twitter

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
2. YouTubeライブ配信(アーカイブでも視聴可能です)https://www.youtube.com/channel/UCOyTwjQoiUJXxJ8IjKNORmA
3. radikoでも聴取可能です

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