スタートアップに限らない、新事業開発の最重要課題――『新規事業を成功させるPMFの教科書』


PMF(Product Market Fit)はスタートアップの世界ではかなり以前から提唱されている概念である。本書は、PMFとは「顧客のニーズを満たす商品で、正しい市場(潜在的な顧客がたくさんいる市場)にいること」と定義している。平たく言えば、人が欲しがるものをきちんとその人に向けてつくる、ということだろう。著者はこのPMFが、スタートアップに限らず大企業の新規事業開発にも適用可能だと説いている。

新規事業開発が上手くいかない理由

世の中の新規事業が上手くいかない理由を、本書では実に12個も紹介している。1つだけ取り上げるとすると「顧客ニーズを検証せずに商品をリリースしてしまう」はどうだろうか。
ニーズについてよくある誤解が、顧客が「〇〇が欲しい」と言ったことをニーズと捉えることである。しかしマーケティング的にニーズとは「〇〇したい(ができない)」といった類のものであり、ともすると顧客自身が気づかないうちに諦めていることでもある。当の顧客本人が気づいていないものが、発言にそのまま表れるとは考えにくい。やはりニーズの存在はきちんと確かめるべきであろう。

売る努力の前にやるべきこと

新規事業として生み出した商品を頑張って売る事自体は全く問題ないが、事の順番として売る努力の前にやるべきことはやはり「売れる商品を作ること」だろう。そのために大事なこととして本書では、バリュープロポジションを作ることを勧めている。バリュープロポジションとは「自社が提供できて競合他社が提供できない顧客が求める独自の価値」と本書で定義されているが、まさにこの独自の価値が見つかればPMFにグッと近づくだろう。
グロービスでも新規事業開発支援にあたってデザイン思考を用いることがあるが、その際にもバリュープロポジションについて考えることを取り入れている。本書では更にバリュープロポジションを考える際の落とし穴について言及されており、実務者にとって大いに参考になるだろう。

大企業もPMFに真剣に向き合うべき?

コロナ禍以前、都内の駅頭ではティッシュが無料で配られていたが、行き交う人の多くが受け取らなかったと記憶している。不要なものはタダでもいらないのが今の世の中である。従って企業活動においては、既存事業内の新商品についても、PMFに至っているかどうかをローンチの判断材料に用いてもよいのではないだろうか。その他、本書にはPMF達成のためのノウハウも記載されている。新規事業開発で「健全に」試行錯誤したい方には心強い一冊となるだろう。

なお、PMFについては先日GLOBIS知見録でも紹介されたのでこちらも参考にされたい。

新規事業を成功させる PMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書 良い市場を見つけ、ニーズを満たす製品・サービスで勝ち続ける
著者:栗原 康太 発行日:2022/10/11 価格:1,980円 発行元:翔泳社

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