企業はなぜSDGsに取り組まなければいけないのか?

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)という言葉を経営者などから聞く機会も増えてきた。SDGsのロゴマークを模したピンバッジを付けている方を見ない日はないし、所属先が既に取り組みを始めているという方も多いだろう。しかし、その本質については、まだ十分に理解されていないように思う。本連載では、企業がSDGsに取り組む意義について考えていきたい。

SDGsの本質とは?

2015年9月、ニューヨークの国連本部で開催された「持続可能な開発サミット」で、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。前文、59段落に及ぶ宣言、持続可能な開発目標とターゲット、実施手段、フォローアップの項目で構成された壮大な文書である。

SDGsは、この中で掲げられた17のゴールと169のターゲットを指す。SDGsというとカラフルなアイコンで示されたゴールばかりが注目され、自社のビジネスがどのゴールに紐づいているか、というマッピングの話が中心になっているのが現状だ。しかし実は、2030アジェンダの前文や宣言にこそSDGsの本質が言い表されている。

例えば、前文第2段落には“no one will be left behind”という表記があり、「誰ひとり取り残さない」という強い決意が示されている。世界的に絶対的貧困の撲滅には至っておらず、日本においても相対的貧困は拡大している。SDGsが目指すのは、こうした格差を解消し、社会的少数者が排除されない、すべての人々が当たり前に参加できる社会である。

また、宣言の第7段落には、“well-being”という言葉も使用されている。Well-beingという概念自体は新しいものではなく、1946年に署名された「世界保健機関憲章」に登場している。この憲章によれば「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義されている。日本でも健康経営の推進からWell-beingが注目されているが、単に健康であるだけではなく、「よりよく生きられる」ということが求められている。

もう1つ、忘れてはならないのが、未来世代への責任である。企業経営における持続可能性(サステナビリティ)は企業として存続し続けられるか、永続的に収益を上げられるか、という文脈で用いられることが多かったが、SDGsの登場により、環境や社会の健全性を長期的に存続させるという本来の定義とのギャップが埋まってきたように思われる。つまり、環境や社会文化に配慮したビジネスを行うことが結果的に企業の経営基盤を安定させることが認知されてきたわけである。

近年、気候変動の問題から現役世代への責任を問う声が大きくなっている。政治だけでなく、経済界としても未来世代へ配慮した企業活動を行っていくことがより強く求められるだろう。このようにSDGsが目指すのは「世代を超えてすべての人々がよりよく生きられる世界」の実現である。

なぜ企業はSDGsに取り組む必要があるのか?

では、こうしたSDGsになぜ企業が取り組まなければならないのだろうか。経営学の大家ピーター・ドラッカーは、「企業にとっての利益の追求が、自動的に社会的責任遂行を意味しなければならない。企業を基盤とする社会は、個々の企業自らの社会的意識に関わらず、社会の目的と安定に貢献する事によってのみ機能する」と述べている。

つまり、従来のCSRのように追加的に取り組むのではなく、利益の追求(本業)が社会に対する善の遂行でなければならないということである。SDGsが目指すのは社会全体の目的であり、すべての企業がビジネスを通じてSDGsに取り組む大義があると言えるだろう。

しかし、「ビジネスにどう実装すればよいのかわからない」「壮大すぎて自社には関係ない」と思われる方もいるだろう。筆者は、ヒト・モノ・カネのフレームワークで考えた場合にも、企業が戦略的にSDGsに取り組む意義があると考えている。すなわち、企業がSDGsに取り組むことで、企業の持続的成長を促し、かつ投資を呼び込みやすくなり、優秀な人材の獲得や従業員のエンゲージメント向上にもつながるからだ。

次回以降は、実際の具体例も交えながらSDGsに取り組む戦略的意義について解説していきたい。

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