グローバルを自分事にvol.5 CAGEに見るグローバル化における違い

グローバルといっても世界はまだ均一ではないということを見てきた。では、グローバルなビジネスにおいては、どんな違いがあるのか。その違いが、どんなチャレンジを生み出しているのか見ていこう。

国境を越えて直面する違いとは?

均一ではない世界においては、多様な違いが存在する。その中でも、ビジネス上注目すべき違いについてまとめたフレームワークがCAGEだ。CAGEは、本拠地のある国(以下、本国)と海外展開を想定している特定国(以下、現地国)との二国間の隔たりに注目している。

CAGEの枠組みは、文化的(Cultural)、制度的(Administrative)、地理的(Geographical)、経済的(Economical)の頭文字をとったものだ。これらは相互に絡み合っている部分もある。たとえば、制度的な隔たりにある「植民地関係の有無」については、過去の二国間に宗主国・植民地としての関係が存在しているかを意味している。こうした関係が存在していると、現存する法制度に何らかの類似性がありうるし、文化的にも類似性がありうる。その結果、隔たりが小さくなり、両国間のビジネス(貿易)が増える傾向にある。

CAGEの活用にあたっては、単に二国を比較するのではなく、特定の業界に絞って検討するとよい。業種によって、特定の隔たりに対する感応度が違ってくるからだ。たとえば、国家の安全保障に照らして重要な産業(例:通信)においては、制度に対する感応度が高いことが予想される。結果として、現地国側が、関税や非関税障壁を作ることが想定される。言い換えれば、違いが大きいということになり、両国間のビジネスは減る傾向にある。

加えて、CAGEは、現地国において本国と同じようなビジネスモデルを構築できるのか、競争優位を築けるのかという観点からのチェックリストになりうる。

本国の競争優位は再現可能か?

海外に展開する企業の多くは本国市場で成功している企業のはずだ。成功とは、競争に勝ってきた、競争優位性のあるビジネスモデルを築いてきたということだ。海外に展開する際の、暗黙の前提の一つが、本国と同じ競争優位性を海外現地国市場でも同様に築いて勝つというものだ。ただし、上述の通り、本国と現地国との間に違いがあると、この前提を実現することがチャレンジになる。こうしたチャレンジを、ハーバード大学ビジネススクールのフアン・アルカーセル(Juan Alcacer)教授は2つに大別している。

1点目は、「よそ者の負債(the liability of being a foreigner)」だ。本国では直面しないようなコストが発生する。たとえば、本国市場であれば、過去の蓄積もあり、その市場についていろんな情報をすでに知っている。法人を登記するうえでの手続きやオフィスを契約するためのルールのような制度面もあれば、その市場におけるニーズなどビジネスを進めるうえで必要となる情報は多岐にわたる。こうした情報が本国と現地で異なるのであれば、当然調べる必要がある。調べるとコストが発生する。現地の競合は知っていて当たり前だが、外国から来たよそ者の自社にとっては知らないことが多い。すると、目に見える金銭的なコストだけでなく、調査にかかる時間など本来であれば別の事業活動に使えたはずという機会コストも発生していく。

加えて、本国であれば普通にメンバーになっている業界関係者のコミュニティも、現地国ではアクセスがないことも多い。現地国の業界関係者へのアクセスがないことによって、事業上重要な情報が得られなければ、それも結果的にはコストになりうる。こうした複数の負債が積み重なることによって、本国と同じコスト構造でビジネスモデルを組めない可能性があるわけだ。

2点目は、「一貫性の罠(the paradox of being consistent)」だ。本国で競争優位を築いてきたということは、本国のある特定の外部環境に対して、社内の仕組み・組織能力などがフィットしてきたことを意味する。本国で成功してきた社内の仕組みは、成功していたとすればするほど、その本国の外部条件により深く整合している(一貫性がある)。同時に、社内の組織間の仕事の進め方も組織横断でフィットしている。こうした社内の仕組みが形式知化しているものだけでなく、暗黙知として蓄積されている場合も多い。

本国の外部環境にフィットしてきた社内の仕組みを維持したまま、外部環境の異なる現地国に行った場合、それらの社内の仕組みは、異なる外部条件に、ふつうはフィットしない。そして本国で成功していて、そのつながりが強ければ強いほど、現地国に合わせて変えるのはより難しくなる。したがい、これを罠(パラドックス)と呼ぶ。

CAGEは、本国と違う環境で戦う際に直面する不利な条件(よそ者の負債と一貫性の罠に該当する条件)を洗い出すうえでもチェックリストとして使える。

いずれのチャレンジも、海外駐在経験やグローバル事業経験のある人には当たり前のことだろう。普通に考えるとコスト的に見合わない。ただし、直接的に見えるコストだけでもないので、見えづらいコストは説明することが難しく、本社からすると言い訳に聞こえてしまう。そもそも、こうした説明や報告をすること自体がコストになってしまう。あるいは一貫性の罠にとらわれていると言える。したがい、本国と同じビジネスモデルを再現することが難しくなる。加えて、新しいモデルを構築しようにも、よそ者としてのコストがかかるし、本国にフィットしている既存のビジネスモデルや意思決定の仕組みが足枷となってくる。

では、どうするのか。次回はこうした違いに対してどんな戦い方があるのかを見ていこう。

注:本稿では、CAGEのAdministrativeの日本語訳として書籍『コークの味は国ごとに違うべきか』で用いられている「制度的」を使用。グロービス学び放題では「政治的」という訳を使用している。

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